我が国が目指すSociety5.0とは,サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させて経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会である.その実現のためには,人間・ロボット・メカトロニクス・マシン・情報を含む系がネットワークを介して結合したサイバーフィジカルシステム(Cyber-Physical Systems: CPS)の基盤技術の発展が不可欠である.これは我が国だけではなく世界的にも同様であり,欧州のインダストリー5.0では「人間中心」「一過性ではない継続性(サステナブル)」「柔軟な適応性(レジリエンス)」をキーワードとして次世代の産業のあり方として提唱されている.CPSによって空間的に離れた複数の人間が複数のマシンを操作することでたとえば遠隔医療・遠隔探査が可能となる.ただし,CPSにはネットワークの容量制限や膨大な量のデータの送受信に伴うデータ遅延・データ欠落などの問題があり,これがマシン操作のリアルタイム性を低下させるため,新たな制御の展開が望まれている.
CPSにおける上記のような問題を解決するキーワードは,推定・予測・制御である.我々は,CPSにおけるマシンの制御性能を向上させることを目的とし,学習を取り込んだ予測・推定によって,最適な制御系設計手法を提案し,その有効性をシミュレーションおよび実験によって明らかにしていく.これらの結果が社会的課題の解決に資するものとなるよう研究開発を続けている.